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~coffee break~
カンボジア最新情報(2020.08)


 さて、新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、まだ収まりそうにありませんね。日本でも再び感染が拡大し、今後の見通しが立たず、さまざまな心配や不安を抱える方も多いかと思います。私も、次にいつ日本に帰国できるのかと思いながら、カンボジアで過ごしています。幸い、カンボジアでは欧米諸国ほど深刻な状況にはなっておらず、8月14日現在273名の感染が確認され、現在はその内の8割の方が回復されています。これまでに死者も出ておらず、国内の経済活動は、ほぼ通常に戻っています。ただし、入国に関しては現在も規制されており、事前にPCR検査で陰性証明の取得や、治療費を賄うための経済的証明証など、一定の条件を満たさなければ入国できないとなっています。また、入国する全員に対して、PCR検査の実施、そして検査の結果が出るまでの間や、陽性の結果が出た場合には、カンボジア政府が指定する施設での待機・滞在が求められます。カンボジア発着の国際線フライトも、減便や運航休止が続いており、日本への直行便は4月で途絶えたまま、現在は主に中国か韓国を往復する便しか飛んでいません。

 私も4月~5月の2か月間は在宅勤務が続き、外出はできるだけ自粛していました。アメリカや欧米諸国の様子については日本でも報道されているかと思いますが、カンボジアの様子はご存知でしょうか。今回のカンボジア通信では、検査体制や医療体制が決して十分とは言い難いこの国での新型コロナウイルス対策や状況などをご紹介したいと思います。

 日本でも感染が初めて確認されるようになった1月末、こちらでも新型ウイルスについてニュースになっていました。中国の武漢からカンボジアに訪れていた中国人が、新型コロナウイルスに感染していることが確認されたのです。日本大使館から在住者にむけて注意喚起がなされ、カンボジア政府も保健省などが本格的に動き出し、様々な機関が今後の対策などについて議論し始めました。2月に入ってからは、各地で手洗いの推進活動が始まり、マスクやアルコールなどの値段が上昇し始めました。いつもなら、マスク50枚入りの箱が5ドル程度で買えるのですが、すぐに倍以上の値段となり、一時は30ドル近くまで上がりました。この時点で、感染者は少しずつ増えていましたが、いずれも外国人に限られていたため、カンボジア人の間では、あまり不安を感じている人はいませんでした。

 ところが、3月上旬にアンコールワット遺跡がある街、シェムリアップで初めてカンボジア人の感染者が確認されてから、かなり急速に状況が変化したと感じました。まず、シェムリアップ市内の学校が休校になり、あっという間に全国の学校が休校になりました。また、観光施設、マッサージ店や映画館、カラオケ、バーなどに休業の指示が出されました。月半ばになると、在住の外国人が帰国するケースが増え、中でも、JICA青年海外協力隊の全派遣隊員に一斉帰国の指示が出されたことが大きなきっかけとなり、在住日本人の帰国者が増えました。航空便の数が減り始め、カンボジアと日本を繋ぐ唯一の直行便も3月末には運休が決まり、特定の日程を除いて、帰国することが難しくなりました。国際機関や企業なども在宅勤務を実施するところが増えたため、プノンペン市内ではウーバーイーツのような出前サービスが急増しました。

 そして、4月にはカンボジアのお正月があるのですが、直前に首相から国民に向けて「今年の正月は延期にする」という突然の宣言があり、4日間ほどの連休がなくなりました。鶴の一声とは、まさにこのことで、正月休みを楽しみにしていたカンボジア人スタッフは皆がっかりしていましたが、国内の移動を制限する、という意味では良かったのかもしれません(カンボジア人は正月休みに、地方に帰省するため)。この頃、近年増え続けていたアンコールワット遺跡への訪問者数が前年同月に比べて99.5%も減ったそうです。地元の人も驚いたようで、「こんな景色は20年ぶりに見た!」と。人がいないアンコールワット、私もぜひ見たかったのですが・・・。ちなみに、延期された正月休みは8月下旬に振り替えられることが決まり、企業や工場などではそれに向けた人員調整や計画変更などの対応が求められました。

 5月以降は、新たな感染者数も随分減少し、少し落ち着いた状況になったため、カンボジアでも「コロナは過去のこと」だと捉える人が増えたように感じました。マスクの着用率も目に見えて下がり、一時休業していたレストランなども営業再開しました。現在でも、新規感染者が見つかるケースは全て海外からの入国者で、カンボジア人は楽観視する人も多いようです。ですが、国内感染が確認されないのは、PCR検査が十分に実施されていないだけであって、実際にはもっと多くの人が感染しているかもしれません。

 諸外国と同様に、5月半ばから全ての入国者に対して空港でPCR検査を実施しており、そこで陽性の結果が出た場合は隔離施設の病院へ、同乗していた乗客も皆、別の隔離施設で待機させられます。また、乗客全員が陰性でも、14日間の自主隔離が求められています。ところが最近、この隔離期間中に感染者が逃走するという事件が起きました。すぐに捕まって隔離施設に戻されましたが、徹底的な監視や管理はできていないと思われます。ちなみに、逃走の罰金は250ドルだったそうです。

 結局、カンボジアでは緊急事態宣言といったものは発令されていません。発令の噂はありましたが、実際には発令されず、一時的に自主閉鎖していた市場や小売店なども、5月半ばにはいつものような街の光景に戻りました。映画館や観光施設など、休業指示が出ていた施設も徐々に再開しています。一方で、教育現場に関しての再開は遅れていて、まだまだ厳しい状況が続いています。なぜなら、この国では未だ全ての学校に手洗い場やトイレなどが設置されていないなど、衛生管理の対策が難しいからです。まだ全ての学校は休校中で、今月に入り、私立校など設備の整った学校については段階的な再開が決まりました。オンライン学習などのツールも作成されましたが、そういったツールにアクセスできない子どもが多い地方では学習の遅れが特に懸念されています。

 経済的な被害も大きく、縫製工場などの倒産により、多くの人が賃金の支払いを受けないまま解雇されるケースも起きています。観光地であるシェムリアップにおいては、多くのホテルや飲食店などが閉店などに追い込まれており、アジア開発銀行によると、今年39万人が失業すると予測されています。近年、右肩上がりの経済成長を続けてきたカンボジアですが、経済的な打撃は他国と同様に大きくなっています。なお、カンボジアでは日本や欧米諸国のように全国民に対して、給付金などの支給はされていません。カンボジア政府は3月末に、中小企業向け融資支援(1億5000万ドル)や、240万世帯の貧困世帯向け現金支援(3億ドル)等の経済対策は打ち出しましたが、全く十分ではありません。よって、アジア開発銀行はじめ、世界銀行やEUなど様々な機関や国がカンボジア向け支援を発表しており、今後はこうした支援のもと、厳しい経済状況を乗り越えていくことが予想されます。

 ただ、今回、この新型コロナウイルスの流行のおかげ(?)で、カンボジア人の間でも色々と変化は起こったようです。一番は、多くのカンボジア人たちが衛生を意識するようになったこと。実に、手洗いをよくするようになりました。きれいな水へのアクセスが限られている地域も多かったのですが、なかなか石鹸で手洗いをする習慣がなく、不衛生な習慣から起こる下痢などは、長年カンボジアにおける公衆衛生の課題でもありました。ところが、この新型ウイルスの流行と共に、各地で手洗いのプロモーションがこれまで以上に大々的に行われ、テレビやラジオなどでも取り上げられました。また、この世界的流行の状況が不安を煽ったのかもしれません。病院に勤める知人によると、下痢をする人も減少したそうです。プノンペンなどの都心部では、アルコールジェルを持ち歩いている人も増え、とにかく、未だかつてない衛生観念やウイルスに対する知識が植え付けられたことは、カンボジアにとって偶然の産物となったようです。

 これからも新型ウイルスとの闘いは続いていきそうですね。私も今しばらくは日本に帰国することが出来なさそうですが、カンボジアより、一日も早い収束と皆さまの健康と安全をお祈りしています。


トゥクトゥクの後ろにも、
コロナ予防のメッセージ!

町中の色々なところに掲げられている
「感染予防しよう!」のスローガンと啓発バナー




保健省が作成したコロナ予防を促すポスター

スーパーに入店する前には、検温とアルコールで手を消毒


関西Actualizers(アクチュアライザーズ) プロフィール

2015年4月設立。経験を通じて、「海外留学や海外生活を考えている人たちの背中を押したい」と考える関西のグループです。 海外生活をする、外国人を迎え入れることにあたって知っておくと良い事や役立つ情報などを発信しています。
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