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ハラスメントを正しく理解しよう!
~「指導」「叱る」はパワハラではない ~

  ― Sustainable Career & Business Consultancy 佐島代表 寄稿記事

 私は社会保険労務士として、労務相談業務に従事しているのですが、よく相談があることが『ハラスメント』です。今回のコラムでは、このハラスメントについて取り上げ、特にパワーハラスメント(パワハラ)の正しい理解に繋げていただきたいと思います。


 4月になると、新入社員が入ってくる企業も多いのではないでしょうか。若い社員はハラスメントへの意識がとても高い上、納得感や成長環境を重視しています。よって、ハラスメントについて改めて理解し、より良い職場環境づくりに励んでください。
 コラムの内容
  1.『ハラスメント』に関する、昨今の流れ
  2.『パワハラ』の定義
  3.パワハラをしないために気を付けること
  4.今日から心掛けること

 1.『ハラスメント』に関する、昨今の流れ

 最近、コンビニやスーパーのレジでフルネームではなく、名字のみやスタッフと書かれた名札を多く見かけませんか。これはスタッフのプライバシーを守り、悪質なクレームから保護する、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の一つなのです。昨今、カスハラという言葉をよく耳にしますが、このように全国的に対策が進められています。

 令和7年(2025年)6月、労働施策総合推進法が改正され、企業等にはカスハラ防止のために必要な措置を講じることが義務付けられることになりました。つまり、企業はカスハラ対策を必ず実施しなければならないということになります。改正法は公布日、令和7年6月11日から1年6か月以内、すなわち令和8年12月までに施行される予定です。企業が講ずべき具体的な措置については、今後、法律に基づく指針で示されますが、現時点では厚生労働省の『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』が実務上の大きな指標となっています。詳細は、『(厚生労働省)あかるい職場応援団』をご参照ください。

 また同時に、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(就活セクハラ)の防止措置も事業主の義務となります。インターンシップ生や就職活動中の学生など、まだその会社の社員ではない方に対しても、セクハラを防ぐための相談窓口の設置や面談時のルール整備などが求められるようになります。私は大学でキャリアコンサルタントとして就職支援もしていますが、インターンシップ先や就職受験先の社員の方から個人的な連絡先を執拗に聞かれる、などの相談をたまに受けることがあります。セクハラだけでなく、ハラスメントは人の尊厳や人権を傷つける行為であり許されないものです。また、会社の信頼失墜にも繋がりますので、会社として方針を決めることが重要です。

 2.『パワハラ』の定義

 ハラスメントの中でも、パワーハラスメント(パワハラ)に焦点を当てたいと思います。なぜ、この話題を取り上げるかというと、「パワハラと言われるのが怖くて叱ったり、指導したりできない」という声を多く聞くからです。新入社員を受け入れる上司や先輩の皆さま、ここで改めてパワハラについて確認してみましょう。

 パワハラは、令和2年6月に改正労働施策総合推進法が施行され、パワーハラスメントの定義が法律として明確に定められました。これにより、何がパワハラに当たるのか、企業・労働者双方にとって判断しやすくなりました。また、この法改正を受けて、労災認定の基準である『業務による心理的負荷評価表』にパワハラが項目として追加されました。 つまり、パワハラが労働者の心理的負荷(ストレス)に大きく影響する行為として、国の基準でも正式に位置づけられたということになります。

 次に、パワハラの定義を整理しておきます。
職場において行われる
 ① 優越的な関係を背景とした言動
 ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
 ③ 労働者の就業環境が害されるもの
この3つの要素を全て満たすものを指します。つまり、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は職場におけるパワハラに該当しません。よって、指導とハラスメントは違うということを理解しておいてください。パワハラを気にして、指導できないと職場の負担が増え、悪い影響を及ぼすことになりかねません。では、どのようなことに注意して、指導を行えば良いのか触れていきましょう。

 3.パワハラをしないために気を付けること

 先程、指導とパワハラは違うとお伝えしましたが、事実業務上の支障や求める行動に基づいて指導を行えば、問題ありません。ただし、感情的になったり、人格否定があったりするとハラスメントになります。叱ることは怒ることではなく、相手の言動を変えることを目的としています。感情的になっても人の言動は変えられないですよね。より具体的に改善に向けた行動案を示すことが大切です。

① 行動にフォーカスし、事実ベースで伝える
「なぜ、こんな事もできないのか」、「誰でもできるぞ」、「やる気あるの?」、「能力が低いね」など、性格や能力についての指摘を行うと人格否定に繋がります。
このような場合は、「この部分の手順が抜けていたので、次はここを確認してほしい」というように、事実に基づいて伝え、改善可能な行動に焦点を当てた言葉が大切です。具体的にどこが間違っているのか、どのように改善したら良いのかを明確に伝えましょう。

② 目的を共有する
なぜ指導しているのか、目的を共有することが大切です。例えば、「あなたに期待しているから伝えている」といった一言があるだけで、受け手の印象は大きく変わります。若い方は成長意欲が高いので、なぜ指導をするのか、叱っているのかを伝えることで、納得し、パワハラと捉えられにくくなります。

③ 人前で叱らない
部や課のメンバーがいる前で叱ることは、内容が正しくてもパワハラと受け取られやすいので、個別に叱ることが大切です。

④ 相手に考えて貰うようにする
指摘したことに対して、「どう思うか?」、「問題の原因は何なのか?」というように問いかけることで、指導は“対話”になります。

 皆さんは『マイクロアアグレッション』という言葉を聞いたことがありますか。 パワハラほど明確な攻撃ではないものの、相手をモヤッとさせてしまう無意識の微細な攻撃のことを指します。例えば、「女性なのに、数字に強いね」(性別への偏見→ “女性は数字が苦手だと思っていた”という思い込みが透けて見える)や、「若いのに、しっかりしているね」(年齢への偏見→ “若い人は頼りない”という思い込みが含まれている)といったことです。

 一見すると褒め言葉のようですが、言われた側は自分の能力ではなく、性別や年齢などの“属性”を基準に評価されたと感じてしまいます。こうした『属性の壁』を感じさせる言葉は、信頼関係を損ねる原因にもなります。よって、「女性なのに、数字に強いね」は「今回の分析データ、すごく精度が高いね」(性別というフィルターを外し、成果物を直接褒める)、「若いのに.、しっかりしているね」は「〇〇さんの立ち振る舞いは、安心感があるよ」(年齢という意外性を捨て、その人自身の姿勢を評価する)という表現に変えてみましょう。

 指導の場では、「男性/女性だから」「若手だから」といった属性ではなく、その人個人の“成果”や“行動”をそのまま認めることが大切です。それが、相手との信頼関係を築く上での確かな土台になります。マイクロアグレッションは悪気がないからこそ根が深いものであり、一回一回の小さな積み重なるが心の壁を厚くするという性質があります。個人に目を向けて、指導するようにしましょう。

 4.今日から心掛けること

 では最後に、職場で無理なくできる工夫を5つご紹介します。

① 叱る前に“期待”や“良い点”、“頑張り”を伝える
「あなたに任せたいからこそ、ここは改善してほしい」、「こういう点がよく頑張っているので、もう少しここを改善すると良くなるよ」といったように、指摘から入るのではなく、まずは期待や良い点などを伝えてから指導する、すると印象は大きく変わります。

② 短く、具体的に、1つずつ話す
抽象的な指摘は相手に理解されず、ミスの再発に繋がる可能性があります。改善点は1つずつ具体的に伝えることが大切です。

③ 1on1の習慣をつくる
短い時間でも良いので定期的に落ち着いた環境で話す場を設けておくだけで、誤解は大幅に減ります。

④ 感情が高ぶったら、一度時間をおく
怒りの感情を否定する必要はありませんが、怒りをそのまま伝えると、どんな言葉もパワハラに近づきます。もし声を荒げてしまったら、声を荒げたことを素直に謝り、具体的に指導をしていきましょう。

⑤ 改善したら必ずフィードバックする
「前より、良くなっているよ」。この一言が部下や後輩の成長意欲を大きく高めます。

 この他、他社での取り組み事例についても、『(厚生労働省)あかるい職場応援団』をご参照ください。

 パワハラは相手を傷つける行為ですが、指導は相手を育てる行為です。この違いを理解すれば、必要以上に怖がる必要はありません。当たり前のことかもしれませんが、職場内での対話があれば防げることがあると思います。職場の先輩や同僚、後輩と無理に仲良くする必要はなく、仕事をする上での対話や信頼関係があれば良いのだと思います。もし、あなたが上司や先輩であれば、常に完璧である必要はなく、今日からできる小さな工夫を心掛け、積み重ねることで「ハラスメント」のない職場となるのではないでしょうか。

 ハラスメント研修や企業内キャリアコンサルティングのご相談があれば、ぜひお声掛け下さい。

Sustainable Career & Business Consultancy 代表 佐島 智子(さしま さとこ)様プロフィール

佐島 智子様プロフィール画像

国家資格キャリアコンサルタント、社会保険労務士、外国人実習雇用士
現在は、主に大学にてバイリンガルキャリアコンサルタントとして、外国人留学生を含めた学生のキャリア支援。また、労務相談活動も実施。
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