はやし製菓本舗インタビュー

大阪の阿倍野区に“はやし製菓本舗”というお店があります。
創業は1933年(昭和8年)。添加物や水を一切つかわない、昔ながらの手焼きせんべい。
今回は、変わらぬ美味しさを昔ながらの製法で守り続ける代表の林 数行 氏にお話を聞かせていただきました。

【エクス編集員】
機械化が進むなか、手焼きの製法を貫かれるのは何故ですか?

【林 氏】
私にとっては、手焼きせんべいの味は父の味でした。
やはり先代である父親の味を継ぐという部分では、機械ではなく手焼きでないとだめだと思ったんです。
端からみると、手焼きの作業自体は何でもないように見えるかもしれませんが、
その日の気温や湿度によって生地の性質も変わりますし、
それと対話するように向き合っていくことが父の味を継ぐことになると思うんです。

【エクス編集員】
製造工程の中で一番注意されているのはどういったところですか?

【林 氏】
焼くこと自体よりも、やっぱり生地の仕込みだと思います。
先にも言いましたが、同じ素材、分量でつくっても
その日の気候によって生地の性質も変わりますので。
生地自体の出来が大きく左右します。

【エクス編集員】
長く職人を続けてこられて、ご自身で一人前になったと
お感じになられた瞬間はどういったときですか?

【林 氏】
先代の父が亡くなったあと、知人伝いに「お父さんが、息子は自分をもう超えたって言うてたで」と聞き、励みになりましたが、見習い時代を入れて、60年ほどこの仕事をやってきて、私自身、まだ満足することはありません。
父も、70歳くらいのときに「せんべい造りのことは大体わかった」と言っていましたが、
それでもあくる日には思い通りにいかなかったり・・笑
ものをつくる人というのは、ずっと答えを探し続けて、
死ぬまで解らないままじゃないかなと思っています。

【エクス編集員】
商品に歴史もあり、問い合わせもあるかと思いますが?

【林 氏】
近頃は、問い合わせもあって通販もすればいいかと思ってますが、
私はそれをしないんです。そうすると他府県からわざわざ来ていただいた人に申し訳ない気がして・・

【エクス編集員】
あとを継ぐ方はいらっしゃいますか?

【林 氏】
あと跡継ぎはいないんです。
ぼちぼちと整理をしはじめている段階ではありますが、
お客様が支持してくださっている間は体力の続く限りやっていきたいと思っております。

~取材を終えて~
昔ながらのせんべいを目にした時。私は頭の中で味を想像したのですが、
はやし製菓本舗の味はそれを超えてました。
「ちょっとこれを食べてみてください」と差し出された焼きたてでまだ表面が柔らかいせんべいは、
とても優しい味がして、ちょうど良い甘さの余韻が口の中いっぱいにひろがり、
幸せな気分になりました。

私は思わず「しあわせ」と口にすると、林 氏は「しあわせですか?私は”しわよせ”です。笑」
と、冗談いって微笑んでいらっしゃいました。

全国菓子大博覧会名誉大賞を受賞した、この手焼きせんべい、
長く味を守り、温かみある林 氏の人柄が今も支持される由縁ではないかと思いました。
後継者がおらず、いつか無くなってしまうと思う残念です。
また訪れたくなるお店でした。


【はやし製菓本舗】