ギター工房 ギターワークス 代表 伊藤邦雄氏 インタビュー


エレキギターのリペアやオーダーメイドを考えるのであれば、
大阪の摂津市にあるギター工房「ギターワークス」が全国区であるという話を聞きました。
エレキギターとは無縁の私は、試しに東京に住む親戚のエレキギター愛好家にそのことを聞いてみた。
すると「そこに発注したことがあるよ」とのこと。どうやら、評判は本物のようだ。
雑誌媒体やネットでの評判もすこぶる良い。

プロのジャズギタリストとして活躍する傍ら、納得のいくギターを製作するため、
1991年に自らギター工房を設立。現場は全国各地からギターの修復依頼が次から次へと届き、
ハイクオリティなオーダーメイドギター製作への対応も大忙し。

今回はプロのギタリストからも信頼され、日本有数の技術を誇る
ギター工房ギターワークス代表 伊藤邦雄 氏にギター製作への思いをお聞きしました。

【エクス編集員】
ギター工房を立ち上げるきっかけは何でしたか?

【伊藤氏】
プロギタリストとしての活動もしながら、
もともとギタークラフトも趣味としてやっていたんですが、
ギター製作学校の講師を務めるということになり、
それを経て自分の納得のいくギターを作りたいということで独立したんです。

【エクス編集員】
プロギタリストでありながら、ギタークラフトマンとしてもご活躍されていますが、
ギターを弾くのと製作するのではどちらがお好きですか?

【伊藤氏】
弾くという楽しみと製作するという楽しみは比較しにくいところですので、それは解らないですね。笑

【エクス編集員】
ギターの木材で珍しくて、これがいいというものはありますか?

【伊藤氏】
エレキギターの木材で言えば「珍しいからこれが良い」ということではなく、
やはり伝統的に幅広く使われているものが良いと考えています。
具体的にはアルダー、アッシュ、マホガニーといった木材がそれにあたると思いますね。
昔は色々な珍しい木材もありましたが、結局は現在の主流として扱われているこれらの素材が
ギターに適しているということで、音色を表現するのに十分なものであると思っています。

【エクス編集員】
エレキギターは電気を通して、アンプで音を響かせるものですが、
木材の違いによってそこまで音に影響するものなのですか?

【伊藤氏】
ギターは色んな素材から製作されていますので、
やはりそれぞれのマッチングによってサウンドが変わってきます。
その中でも木材の違いは大きく影響を及ぼすものです。
音の抜けが良くなる木材もあれば、輪郭がハッキリした音になる木材もあるので、
そのギターのもつ音をつくるということに関しては大きな役割を持っています。

【エクス編集員】
オーダメイドギターの発注がたくさんあると思いますが、
これまでに「大変だなあ」と感じる形のオーダーはありましたか?

【伊藤氏】
例えば複雑にとがったシェイプのギターオーダーなどは
仕上げの塗装や磨きに大きく手間がかかるということはあります。
ただ製作上大変と感じるようなシェイプのギターオーダーは今まであまりありませんでしたね。

【エクス編集員】
ギターを製作するうえで、特に気をつけていることは何ですか?

【伊藤氏】
まずそのお客様にとって弾きやすいギターとはどういったものか、
どの様なサウンドを求めているのか等をお話しながらイメージを引き出し、
それを実現するためにはどの様にしたら良いかを具合的に考えて行きます。
お客様のリクエストに十分お応えできるかどうかはこのディスカッションが大変重要になります。
丁寧に製作するというのは当然のことなのですが、
それと同時にお客様が求めているサウンドをより深く理解することに気をつけています。

【エクス編集員】
伊藤様ご自身が良いと感じるギターとはどういったギターですか?

【伊藤氏】
個人的にはバランスの良いギターですね。
6つの弦を弾いた時にそれぞれが均等に響いているギターが良いと感じています。
また各弦のテンションバランスが良い、つまりピックが弦に当たる瞬間のタッチに
バラツキが無いということも大切だと思います。

【エクス編集員】
こんなギターがつくりたい!というようなものはありますか?

【伊藤氏】
それぞれのメーカーのコンセプトは色々あると思うのですが、
私自信のコンセプトとしては目新しいものを作るということではないんです。
「プレーヤーのイメージする音をどう引き出すか」そこが最も重要だと思っておりますので
斬新なフォルムであるとかそういった意識はもっていないんです。

【エクス編集員】
色々なメディアに紹介され、ギターワークスは全国的な規模で評価されていますが、
ギタークラフトマンとして一人前になった。という風に感じられたのはいつ頃ですか?

【伊藤氏】
正直言いますと、長年やってきてもそういった実感はまだないんです。笑
がむしゃらにやってきて、お客様のフィードバックをうけて、また製作して・・
そうやって長年やってきてますが、シビアに言えばまだまだ100%ではないと思っているんです。
ギターを製作し、お客様に喜んでもらえているということは嬉しいことではありますが、
こちら側が「これでよし」と思うものを作りあげたとしても、
お客様の感じる100%はまた別な場合もありますので、
常に自分の中でもっと出来ることがあるのではないか?という気持ちをもっています。

【エクス編集員】
数ある楽器の中でギターに魅かれたのは何故ですか?

【伊藤氏】
解りません。好きになる気持ちに理屈は無いんじゃないですかね?笑
気がついたら、ギターを弾いていました。

【エクス編集員】
ギターを製作するのを辞めてしまいたいと思ったことはありましたか?

【伊藤氏】
無いです。笑
ギターを製作するうえで、オーダーに対して前例がない場合、
経験の浅い頃とかは悩むことが結構あったんですが、
そういう問題解決をすることについては、努力するという感覚ではないですね。
本当に好きなことをやっているので、悩むことさえ楽しい。そういう感覚ですよね。
努力という言葉は召使いが嫌々力仕事をさせられるというところから来ている言葉ですので、
私の場合、努力しているという感覚ではないんです。

【エクス編集員】
ギターだけがもっている魅力ってなんだと思いますか?

【伊藤氏】
手軽な楽器だということですね。トランペットとかもありますが、
ギターは和音も弾けますし。そういったところですかね。

あと、実は不完全な楽器だという部分なんです。それが故に奥が深いというか・・
そこが魅力だと思いますね。
例えば和音を奏でるという面では、ピアノの方が優れているんです。
ギターは6本弦があって、左手4本の指でしかコードを押さえれないので、
10本の指を使えるピアノに比べて不完全なんですよね。
コードを変えようと思っても指が届かないこともありますし。笑
すごく制約があるんです。

かと言って、単音のメロディーを弾こうと思っても、サックスとかにはかなわないんです。笑
ロックとかではギターは花形ですから、とても目立っていいんですが、
私が演奏するジャズの世界ではどうしても日陰の存在ですね。笑
でもその制約のなかでどのように表現していくか。そういうところが魅力だと思っています。

【エクス編集員】
ギターを製作する上で、一番重要な工程はどういった部分ですか?

【伊藤氏】
ギターを製作で、どこが一番重要だというところは無いんです。
それぞれが音に影響してくるところですので、
どの部分も重要になってきます。
でも、しいて言うならネックですね。
指は非常に敏感で例えばネックの幅や握りが手に合わなかったり
フレットの高さが微妙違う、などで思うように弾けなくなったりということがあるんです。ですから多くのオーダーの中でもネックに関する要望が多いですね。

【エクス編集員】
ギターワークスとして今後のビジョンは何ですか?

【伊藤氏】
ギターワークスではオーダーメイド、リペア、ギターパーツの販売を主に行なっていますが、
パーツ販売に関しては今後、ネットを活用して対応できるような体制を勧めたいと考えています。
というのは製作工具などは、我々のように実際につかっているところでないと
対応できないことも多いんです。

なんとか一般の方にも提供しやすい環境を整えて、
自作派の方々のお役にたてればと思っています。

~取材を終えて~
「好きこそものの上手なれ」とはよく言うものですが、
取材中「ギターが好きだからです」という答えが
書ききれなかったところでも本当によくでてきました。
そしてギターとよく接し、感謝する気持ちを忘れなければ
美しい音となって返ってくるともおっしゃっられていました。
「今日も良い音をだしてくれてありがとう」物であってもそういった
感謝の気持ちをもってギターと向かいあうことが大切だというお話を聞かせていただき、
本来、人と人の関係としてあるべき姿と何ら変わりのない気持ちが工房内に溢れていました。
そういった感謝の言葉が言霊となってギターに宿り、
ギターワークスの素晴らしいパフォーマンスに繋がっていっているのだと思います。
今後もギターワークスの活躍から目が離せません。

[ギター工房 ギターワークス]