大阪錫器株式会社 代表取締役 今井達昌氏 インタビュー

大阪市にある大阪錫器(おおさかすずき)株式会社を訪問させていただきました。
お酒を飲むときに錫(すず)製の酒器を使用すると、
とても美味しく飲むことができるそうです。
錫はお酒を燗にした時など、雑味を消し、
かどの取れたとても良い味にする特性があるそうです。
大阪錫器株式会社様は江戸時代の後期に創業し、
現在国内の60%を越える錫器のシェアを占めています。
代表を務める今井達昌様は通産大臣より認定された伝統工芸士。
職人として活躍し、数々の賞を受賞しておられます。
今回はその今井達昌氏に職人としてのものづくりにかける思いを聞いてまいりました。

【エクス編集員】
創業が江戸時代の後期だということですが、
その当時はどのような流れで製造がはじまったのですか?

【今井氏】
弊社だけではなく大阪の錫器というのは、ほとんど京都から移ってきたものなんです。
というのは、元々錫は遣唐使、遣隋使の時代に日本に伝わってきました。
当然その時代は貴族社会だったので京都中心に錫が広まっていきました。
武家社会も含め一般にも錫が広まっていったのが江戸時代で、
徐々に経済の中心になりつつあった大阪へ工房ごと多くの錫がに移ってきました。
弊社はどちらかというと店舗を構えるというよりも、作り手としての歴史をもつ会社ですから、
暖簾をかけて何代目という情報があれば詳細なルーツを追い易いのですが・・
「スズヤイヘイ」という職人が京都から大阪移って始めたというのが
最初だということは聞いています。笑

【エクス編集員】
とはいうものの、長く伝わってきているものを継ぐということになった時に
大きなプレッシャーがあったと思いますが?

【今井氏】
無かったです。笑 もともと物をつくるのが好きでしたし、
家の仕事を手伝い始めるということで、めちゃくちゃ単純な動機ですが、
大学をでてから就職活動をせずに楽でいい。くらいの感じでしたよ。笑

【エクス編集員】
職人をずっと続けてきて、一番辛かった時代はいつ頃ですか?

【今井氏】
辛いというよりも、「意見が合わない」というのが歯がゆかったです。
私は当時の代表である父の息子として職人をスタートしたわけですが、
そういうことであってもこの世界は職人としての技術が
伴わなければ誰も言うことを聞いてもらえません。

入ってからは修行に精進し、父や職人とぶつかりあいながら必死にやってきました。

【エクス編集員】
平成11年2月に通産大臣より伝統工芸士としての認定をうけましたが、
ご自身で「一人前になった」と感じたのはいつ頃からですか?

【今井様】
ものを作る人間は自分が一人前だと思った瞬間で終わりです。
そこからは何も伸びません。自分がこの仕事が出来ると思えばそこで終わりです。
職人として、もう一つどうすれば良いものができるか、を常に探求できない人は、
周りから見れば頼りない人で終わってしまいますよね。
今日出来たものより明日はもっと・・の繰返しです。

【エクス編集員】
錫器の全国シェアが60%強だということですが、
大阪錫器の製品がそれだけ支持される理由は何だと思いますか?

【今井様】
弊社のような小さな会社が全国シェア60%っておかしいですよね。笑
でもそれはやっぱり時代のニーズを考えいるからかな?と思います。
伝統工芸品と聞くと古いものだというイメージがあると思いますが、伝統工芸品は昔からの技術。
それが途絶えたら終わりです。
しかしそれが今日まで伝わっているのは各時代にあったものを作り、
時代を乗り越えてきたからだと思います。
技術はそのままに、時代に合わせたものを考えていく。
ですから伝統工芸品は決して古いものではなく、
時代に合った新しいものとして今でも支持されているのだと思います。

【エクス編集員】
具体的に昨今のニーズに合わせたものとはどういった商品になりますか?

【今井氏】
タンブラーやジョッキ類ものがそうだと思います。
今の人がどういったデザインに惹かれ錫器を手にとってくれるのか。
シンプルですがそういったことにも敏感に対応する必要があります。
錫はとても熱を通しやすいのでなかには籐巻きを施し、
熱くても持ち易いように機能面を考えたものもあります。

【エクス編集員】
錫器を作るうえで最も技術のいる工程は何ですか?

【今井氏】
それをよく聞かれるのですが、どの工程が不十分であっても製品にならないんです。
仮に錫を溶かして型に入れ込む時点で60点だとしたら、
それを超える製品は生まれないんです。
他の工程でカバーするということは出来ないんです。
そういう意味では全てが重要で技術のいる工程になってきます。

【エクス編集員】
大阪府知事賞など、多くの賞を受賞していらっしゃいますが、
職人をしていて一番嬉しかったことは何ですか?

【今井氏】
作ってる我々からして一番ありがたいのは、
買って使ってもらった人に「あれ良かったですよ」と言ってもらえることです。
賞をとったということも嬉しいことではありますが、賞を取ることが私の仕事ではないので・・。
会社が潰れそうになったときに大きな商談が決まり、潰れずに済んだということもありましたが、
それは経営者としての喜びであって職人としては、月並みではありますが、
やはり使ってもらった人に喜んでもらえることが一番嬉しいことです。

【エクス編集員】
大阪錫器株式会社の今後のビジョンは何ですか?

【今井氏】
そんなものは無かったりして。笑
取材に来ていただいて無いでは困りますね。笑
特に先立って「こういうものを作る」といったことを決める作業というのはしないんです。
日々作りながらこういうものはいいのでは?と思えば
そのアイデアを取り入れていくということはもちろんしていきますし、
若い人材が発案してくることも大いに取り入れています。

あとは、自社からどのように情報を発信していこうかということも良く考えます。
販売先は楽天で部門ランキング1位。
総合ランキングでも13位くらいには入ってきているようです。
出荷が多くなる時は販売先がパンク寸前になるそうです。笑

~取材を終えて~
インタビューを通して感じたことは、仕事に対する厳しい考えをもちつつも、
若いスタッフの意見にもしっかり耳をかしていらっしゃり、
古い仕来りに囚われない柔軟な発想をお持ちな方だということでした。
冗談交じりでインタビューに応じてくださる様子は、
いわゆる古い職人気質のようなものではなく、
若い人にも垣根なくコミュニケーションができる
ヒューマンスキルの高さの現れのような気がしました。

[大阪錫器株式会社]
大阪錫器株式会社

[錫器の製造工程]
http://osakasuzuki.co.jp/koutei.html

[楽天 / 職人魂.com]
http://www.rakuten.ne.jp/gold/syokunin-soul/suzuki/suzuki.html